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カラダシホン日記

主に食べることと、生き方のブログです。

【書評】跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること 東田直樹

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重度の自閉症の東田直樹さんが書かれた本(一読した後に、どうしてもこれが自閉症の方の執筆だと信じられず、東田さんの動画を探して見て、さらに驚いた)。恥ずかしながら、自閉症の方がたの内面にこれほど、深い知性があると考えたことがなかった。まず、そのことを反省。

跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること

新たな出会いとなる貴重な1冊となったゾ!

自閉症のトモちゃん

僕が、自閉症といったらいつも思い出すのは、一個年上のトモちゃんのことで、トモちゃんは、独り言が多くてずっとブツブツ言ったり、ときどき笑ったり、ふっと立ち上がっていなくなったり、不思議な言動が多かった。

そんなある日・・・

突然トモちゃんが「僕がいるとみんなの輪を壊す」とつぶやいた。トモちゃんが、そんなことを考えているなんて思いもよらなかった。「いや、そんなことないよ」って笑ってごまかしたけど、それまで、僕はトモちゃんを見下げていなかったか?その記憶は、今になっても時々よみがえってくる。

トモちゃんとは、あんまりまともに話したことが無いんだけど(話せなかったからね)突然、そんなことを思い出した。

自閉症という病の内面にある真の姿

「誰にも気持ちを分かってもらえなかった頃、僕は、まるで暗い洞窟の中にいるように、たださびしかったです。話ができなければ、人からは言葉がわからないと判断されます。そして、話し掛けてもらえなかったり、自分とは違う世界の人のようにみられたりしてしまいます・・・・


話ができず不便だったり、大変だったりすれば、どうしたら少しでも言葉が伝わるか、自分でも工夫し、何とかしようとするはずです。これは、報われるためではなく、生きるための努力なのです。与えられた運命に立ち向かうことができるなら、自分をもっと好きになれるのではないでしょうか。何より大事なのは、その人の生きる意欲を支えることだと信じています。」



(跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること 東田直樹 イースト・プレス P77~79)

信じられなかったのだけど、東田さんは重度の自閉症だ。うなったり、叫んだり、跳びはねたり、突然笑い出したり・・。コミュニケーションがとれない。目の前で、終始動いている彼を見れば、会話が成立するとは思えないほどだ。ところが、内面には豊かな(豊かすぎるくらいの)感情がある。

東田さんのドキュメンタリー動画の中では、彼の脳のMRI検査の結果、言語失効という状態であると診断されていた。感情や理解を「表す」「言語化」する部分が、いわば壊れているのだ。でも、言い換えれば、そこさえ働けば、一般人となんら変わるところがない。豊かで、深い思考、内面がある。それだけに辛い。

「あなたのもっとも怖いものは何ですか?」 インタビュアーのこの質問に東田さんは、「人の視線が恐いです。人は刺すような視線で僕を見ます。」 と答えている。誰よりも自分のことを分かっている。

親でさえ、東田さんの内面には気付かなかったはず。ただ、東田さんの親はとっても素敵なことに、彼とコミュニケーションをとることをあきらめなかった。文章能力が秀でていることを発見し、やがてキーボードの入力を必死で教える、やがて、東田さんは、PCのキーボード上で豊かに自分を表現できるようになる。いわば出力装置を見つけたというわけ。

インタビューの際は、お母さん手作りの「文字盤ポインティング」というキーボード配列を書いた紙を指さしながら一文字ずつ答える。キーボードのように文字を指で押さえていくことで、頭の中に浮かんでくる文字をしっかり記憶しながら話すことができるのだ。

自閉症の東田さんにとって、記憶は線のようではなく点のようになっている。ある程度の文脈の中で、記憶を思い起こしたり、必要な時に出力したりできない、目にするもの、頭に浮かんできたものはすべて口から飛び出てくる。インタビューをしている最中にも「3時50分、3時50分」と時間をつぶやいたり、カメラマンのカメラが目に入ると「ニコン、ニコン」と言ってしまう。本人が願っているわけではないが、衝動に勝つことはできない。

そこで、文字盤ポインティングという独特な方法でコミュニケーションすることで、東田さんの思いをゆっくりだけど、確実に伝えることができる。 コミュニケーションの方法を模索し続けなかったとしたら、東田さんがこのように自分の考えを言いあらわすことなどできなかったに違いない。

これは彼の表現だけど「壊れたロボットの中に閉じ込められて」いる状態が続いただろう。

本当の私を、本当の私を、内面の私に気付いて!そう訴えている内面の声。耳を傾けたい。心からそう願う。コミュニケーションの方法を開発し続ければ、声にならないその声を聞けるのかもしれないと気付いた。あきらめないことだ。東田さんのこの実例は、不可能は無いことを証しているじゃないか。

どんな自分も自分

「小さい頃の僕は、普通になった自分を想像するたび、胸が苦しくなっていました。このままの僕ではだめだと言う気持ちが強かったのです。幸福な自分を想像することで、今の僕は、本当の自分ではないと思いたかったのでしょう。僕は他の誰かになりたかったのです。それが叶わない夢だと知ってからは、自分の生きる道を真剣に模索しはじめました。


どんな自分も自分なのです。それは、どうしようもないことですが、現実世界だからこそ、かなえられる夢もあります。」


(跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること 東田直樹 イースト・プレスP161-162)

自分にはないものを欲しがってしまうのは、自閉症だからではなく、僕がずっと持っている感情だ。ほんとは、自分はもっとできるとか、もっとこうなりたいとか、今年こそは、とか、自分にとって本当に手が届かないものを見続けていると、いつまでたっても幸福にはなれない。現実の延長線上にしか夢は無い。

そんな単純なことだけど、僕よりはるかに東田さんのほうが分かっている。22歳だけど、内面は深い。

東田さんはすでに作家として活躍している、絵本も複数出版している。走り回ったり、イケメンの俳優になったり、流暢な講演家になれないかもしれないけど、東田さんなりの夢をつかもうと努力している。そして、それは可能な範囲にあるんだ(実は、各種講演会で講演もしている・・・動画を見て知ったけど、アメリカでの講演会の様子を見た。すごい)

できないことではなく、今、自分ができることにフォーカスするのはとっても大事なことだ。どの自己啓発書にも書いているような陳腐なことだけど、じゃあ、本当にそれができるかどうかは別問題だ。今の自分を正直に見つめて手が届く場所を、自分が到達できる場所をちゃんと見つけることは、幸せに直接関係することだろう。逆にいつまでも手が届かないものに手を伸ばしている人生は、どれほど恵まれていても本人にとっては不幸かもしれない。

この意味で、東田さんより、はるかに不幸な人がたくさんいるじゃないか。いわゆる障害者と言われる人だとしても、東田さんは幸福なのだ。幸福は相対的に図られるものではなく、絶対的なものだということが分かる。

「偶然」を受け止める強さ

「僕が自閉症という障害を抱えて生まれてきたことについては、命のリレーを引き継ぐ中で、たまたま僕の順番の時、変異が起こったのだと考えています。障害を抱えて生活することは大変ですが、自閉症で良かったと思えることもたくさんあります。これを必然ととらえれば、今よりもっと、幸せになれるのかというと、そんなこともないような気がします。


そう思うのは、僕が偶然という結論の理由に、自分で納得しているからです。生きるための理由に満足できれば、それでいいと思います。必然も偶然もどちらも、人の力ではどうにもならないことがですが、自分のとらえ方次第によっては、良いほうに考え直すこともできるのではないでしょうか。」


(跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること 東田直樹 イースト・プレスP189-190)

起こったことを「偶然」ととらえられるかどうかに、その人の強さが現れる。 これは「必然」なんだ。これは「運命」なんだ。「神が選ばれた人に与えられた試練なんだ」「先祖に原因があるんだ」、そういってしまえば、ある意味で気持ちは楽になる。だって自分のせいじゃないし、ある意味で自分が被害者だし、これがあったから幸せになるんだって。無駄なものなんかないんだって。聞こえはいいけど、自分の人生を自分で受け止める見方ではない。

起こるつらいことを「偶然」だって受け止めることができる人ってどれくらいいるだろうか。実際には幸運なことも、不幸なことも同じくらいの確率で誰にも臨む。だから、それをちゃんと受け止めて、立ち向かうこと。原因とか、因果関係とか、そんなことではなく、起こってしまったことはしょうがない、あとはどれくらい前を向いて生きるか。

そこからがスタートなんだって、ちゃんと受け止めること。

まとめ

この22歳は半端じゃない。 彼はとても強い。

「重度の障害者は、何もできない人間に見られがちですが、実は強靭な精神力を持っている人も多い気がします。つらい経験は、時に自分を強くするからです。人の手伝いがないと生きられないからと言って、気持ちまで助けがいるとは限りません。自己の確立というのは、人とのつながりの中で育つものではなく、自分で自分のことを支えようとする生き方から、生まれるものだと思っています」


(跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること 東田直樹 イースト・プレスP202)

もしかすると、人生とか、
物の見方を一変させちゃうかもしれない力がここにある。


跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること

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