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カラダシホン日記

主に食べることと、生き方のブログです。

説得力のある異質の糖質制限本【書評】白米が健康寿命を縮める~最新の医学研究でわかった口内細菌の恐怖(花田 信弘)

実に読みごたえのある「糖質制限」本?をご紹介します。

一般的な糖質制限とは全く違う角度で、白米中心の食生活への警笛を鳴らす良書です。白米中心の食生活で、歯の健康が損なわれ、結果として「菌血症」が生じている。これが、いわば万病のもとになっているという理論。これまでまったく考えたことがない分野の健康リスクです。

実際に、厚生労働省が展開している「健康日本21」では、現在9つのファクターが取り上げられています。

「(1)栄養・食生活(2)身体活動・運動(3)休養・こころの健康づくり(4)たばこ(5)アルコール(6)歯の健康(7)糖尿病(8)循環器病(9)がん」健康日本21

健康のファクターとして(6)歯の健康は、2000年くらいから提唱されるようになったようです。歯の状態は、全身の健康に直接関わります。下記の本を読んだ時には、一時的に歯磨き法に凝ったりしたのですが、最近では、また無頓着になってました(参考:歯磨きで口呼吸・鼻炎が治るとな?除菌歯磨きを習慣にするために、デンタルグッズをまとめて購入! - カラダシホン日記)。

今一度、食事と歯の関係を見つめなおすことができました。興味深い箇所が多かったのですが、3か所くらいに絞ってマーカーした部分をご紹介したいと思います。

血管の炎症の原因「歯源性菌血症」

歯と歯茎の間にできた炎症から、歯周病菌や虫歯菌は簡単に入り込みます。菌は身体中をめぐり、血管内に炎症を起こします。著者は、これを「歯源性菌血症」と呼んでいます。本来、体は外部から入ってくる「菌」を止めるための仕組みを持っています。人間の体には、菌が住みつきやすい部分はいろいろあるのですが、歯以外の箇所の場合は身体が自動的に菌を追い出す仕組みを持っています。

「他の部分は「粘膜上皮細胞」で覆われており、それが剥離する際に上皮細胞とともに捨てられるシステムになっているのです。 この剥離システムをターンオーバーといいます。組織の下からどんどん新しい細胞が押し上げられて、古い細胞は剥離して、排出されます。 耳あかや鼻くそは、上皮細胞が剥離したゴミです。表面が剥離してしまえば、ここでいくら細菌ががんばったとしても、剥離細胞と一緒に排出されてしまいます。 腸の上皮細胞は蠕動運動によって大便と一緒に捨てられますし、女性の膣の細胞も、分泌物と一緒に排出されます。


剥離しないのは、歯の表面だけなのです。歯の表面にいったん歯垢がくっついてしまうと、歯みがきをしない限り、その場に居座ってしまいます。歯の表面は他の部位よりも約1000倍密集した細菌の塊ができています。ですから、わざわざ歯をみがかなくてはならないということになるのです。」

人間の体の中で、歯だけは、いわば「むきだし」状態になっています(髪の毛や爪もむき出しですが、乾燥している箇所なので菌は繁殖しないようです)。歯周病菌や、虫歯菌が、ごっそり口腔内に住み着いてしまうと、虫歯や歯茎の隙間から、絶え間なく菌は血液中に入ってくることになります。ある実験では、歯の隙間から入った歯周病菌が90秒で上腕部の血管にいることが確かめられています。あっという間に、歯から入った細菌は血管内を駆け回ります。そして炎症を起こすのです。本来、身体の免疫システムは、入ってきた菌を退治してくれるはずなのですが、次から次へと菌が無防備な個所から侵入し続けられると、さすがにお手上げとなります。

血管の様々な個所で炎症がおきます。恐ろしいことに、くも膜下出血や、アルツハイマーで死亡した人の脳や、足の動脈から歯周病菌が発見されているそうです。これは、歯から侵入した菌が全身をまわって炎症を起こしていることの証拠です。このような「歯原性菌血症」を防止するためには、せっせと歯磨きをするしか方法が無いわけですが、ここで、この本ならではの興味深い視点が登場します。

それは、そもそも、虫歯や歯周病の原因となる「糖質」を制限していくということです。

糖質を制限することで口腔内の健康を保つ

この本を読んで初めて知りましたが、飴、ジュース、お菓子の食べ過ぎ(砂糖が多い)で虫歯になるのは歯の表面のエナメル質です。これは、いわば、子供の虫歯で、砂糖と虫歯の関係が周知されるにつれて、しっかり虫歯人口は減っています。しかし、いわば、大人の虫歯は逆に増えているのだそうです。これは、白米などの「糖質」によって歯根部分の象牙質が虫歯になるものです。大人の虫歯は、歯の根っこからやられるために、結局、歯を失うことになりかねません。

そこで、歯の健康、歯から始まる血管の炎症を防ぐための糖質制限という発想が登場します。著者もこう述べています「現在、栄養学的な見地から、糖質を控えることの必要性を訴える方も増えていますが、歯科的な見地からも、「主食」や糖質への考え方を大きく見直していかなくてはいけない」。これは、非常に興味深い視点です。

実際、原始人の生活(煮炊きしない)をしていれば、人は虫歯にはならないのだそうです。
ちなみに、チンパンジーには虫歯がないとのこと。

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「京都大学の霊長類研究所と鶴見大学の歯学部が共同で、チンパンジーの歯について研究をしたところ、チンパンジーには虫歯も歯周病も起こらないことがわかりました。原始的(野性的?)なチンパンジーの食生活と近代的な人間のそれとでは、どこが決定的に違うかといいますと、「加熱したものを食べているかどうか」です。


私たち人間は、米や芋などは加熱をしないと食べられません。非加熱のデンプンは、硬いβデンプンですが、加熱すると柔らかいαデンプンに変わります(これを糊化といいます)。 柔らかくなったαデンプンは唾液のアミラーゼ酵素で分解されやすくなりますが、それによって多糖類が二糖類の麦芽糖に分解されるために、悪玉細菌のエサになってしまいます。つまり、炊きたてのホカホカした白ご飯は、歯にとっては大敵、ということです。 仮に、人間も野生のサルのように、生の食品ばかり食べていたとしたら、口の中はさほど汚れませんので、虫歯にはなりにくいのです。」

興味深い実験結果として、4週間無人島で生活させた被験者の口腔内は、歯磨きをしなくても虫歯菌も歯周病菌もいない状態だったのだそうです。もっとイメージしやすい例として、フィリピン・ルバング島から戦後30年たって帰ってきた小野田少尉も、近代的な砂糖・糖質の少ない食生活を送っていたためか、虫歯一本もない状態でした。原始の食生活に近づけば近づくほど、歯の健康は維持しやすくなります。

歯にとっても、主食としてのご飯・パンなどの糖質、または、お菓子、ジュース等の糖質を摂取しない方が良いという理屈が分かります。MECのようにお肉ばっかり食べているほうが、まだ、歯のためには良いということになります。

「白米」は本当に伝統食か?

この本の主眼は「歯原性菌血症」の事実を訴え、その原因である「糖質」を制限するように勧めること。そして、主な原因(主食だから)としての「白米」を常食することに警句を鳴らすことです。

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「白米」は日本の伝統食とは言えないということを、様々な証拠をあげて論じています。白米中心の「和食」だった鎌倉・江戸時代の人々が短命で、低身長だったことを考えると、白米の「伝統」が揺らぎ始めます。興味深いのは、白米が主食の地位に押し上げられていった背景には、政府が税収を確保するという実際的な目的があったということ。動物の肉などは、保存できませんし、たくさん集めることができませんが、コメなら保存がきくので年貢として徴収しやすかったのです。

その後、豊臣秀吉により太閤検地(石高制(米=貨幣)が確立)などの政治的な思惑を経て、日本の伝統食は白米を主食とした和食という常識が作られていきました。それまでは、粟、ヒエ、麦、稲、豆などの穀類を作っていた百姓たちが、こぞって米を作るようになります。

「稲作は税の管理がしやすかったのです。 稲作が広まったおかげで、食料の確保がうまくいくようになり、生きるためのカロリーだけは十分に確保できるようになりました。それに伴って、日本人の人口は増えていきました。 しかしながら、その栄養の質を見ると、肉食禁止令の影響で、炭水化物に偏ってしまったと思われます。それでも、税の徴収のために稲作を奨励される政治が続きます。こうして、炭水化物を主食とする和食文化が生み出されました。それは同時に、慢性的な動物性タンパク質不足による低栄養の原因になってしまったのです。」


「もし、最新の栄養学的視点で考えずに、「古き良き伝統の和食」を唱えるのであれば、明治時代や江戸時代、鎌倉時代は飛び越えて、古墳時代、卑弥呼の時代あたりまで、一気に遡ったほうがましなのかもしれません。」

実に興味深い指摘です。

また、歴史的視野で見るときに、白米中心の和食が、必ずしも自然なものではないことが分かります。MECを学んだ時に、この点はなんとなく理解していましたが、食の日本史をざっと振り返るとなおのこと納得がいきます。人間本来の食生活は、煮炊きした糖質を食べるのではなく、豆類などの雑穀や小動物や貝・魚、果物などなのかもしれません。そうなると、本来の食生活に立ち戻ることが、歯のみならず、心身の健康にも役立つという壮大な結論までたどりつくわけです。

「原始人食」が病気を治す (ヒトの遺伝子に適合した物だけ食べよう)

「原始人食」が病気を治す (ヒトの遺伝子に適合した物だけ食べよう)

まとめ

異例の糖質制限本でしたが、実に説得力のある構成です。

歯から菌血症になってしまう現実、歯周病、虫歯の原因が糖質にあるという指摘、そもそも白米中心の食生活は日本の伝統食ではないという正論です。これを踏まえて、「糖質を食べないと体に良くないよ。バランスよく、伝統的に食べられているものを食べたほうが良い」という糖質制限反論にカウンターパンチを浴びせるものになっています。私は、個人的には、完全にノックアウトされましたね。歯の健康から、糖質制限の根拠に至るまで、幅広く思いを巡らせることができる、素晴らしい一冊でした。

糖質制限に関心をお持ちの方にはぜひお読みいただきたいです。

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